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このコーナーでは、アメリカ西海岸Orange County(OC)にて行われるライブレポートをお届けします。

第36回: Corey Taylor U.S. Solo Tour  with Wargasm and Luna Aura - Riverside, CA
 

Slipknot、そしてStone SourのフロントマンCorey Taylorが新ソロアルバムCMF2を先日リリース。2020年のソロデビュー作CMFTに続く作品である。因みにCMFTは米ビルボードのロックアルバムで6位、英国のロックアルバムでは2位。そして豪州、オーストリア、スコットランドの音楽チャートでは8位そしてドイツのチャートでは9位を記録。新譜CMF2についてCoreyは「この先目指しているところ」を表現して制作されている事を発言しており、パンク、ポップロック、オルタナロック、そしてアコースティック曲と正にCoreyが目指す自身のパーティーアルバムとなっている。前作そして新譜CMF2を通して素のCorey Taylorが音楽を楽しむ様子が伝わってくる。今回そんな新譜CMF2をひっさげCoreyが若手アーティストWargasmとLuna Auraを連れて全米ツアーを開始。Coreyが活躍するSlipknotの音楽とはまた違ったジャンルで活動する2アーティストとの異色のツアーに今回ツアーレポートを書く機会を得られました。会場は南カリフォルニアRiversideにある今年で95年目を迎えるRiverside Municipal Auditorium。管理人も何度か来た事がある会場でありKillswitch EngageやChildren Of BodomそしてGhost等のライブを楽しんだ場所だ。今回取材を許可して頂いたBMGの担当者に感謝いたします。

Corey Taylor、Wargasm、Luna Aura

 

秋が既に到来し少し肌寒い夕方、南カリフォルニアRiversideの中心であるダウンタウン地区にあるお洒落なレストランやショッピングモールが立ち並ぶ中にRiverside Municipal Auditoriumはある。管理人が到着した時は既に開場された後であり、セキュリティチェックに並ぶ人々が会場前に列を作っていた。事前に手配して頂いた撮影パスをボックスオフィスで受け取りセキュリティもスムーズに通り会場内を散策。会場は3フロアあり、ステージのあるフロア(後方には座席あり)、2階の座席があるバルコニーエリア、そして物販やドリンクバーのある地下エリアがある。マーチエリアにはソロ活動期間しか手に入らないとあってCoreyのマーチを求める人々が長蛇の列を作っていた。因みにこのRiverside Municipal Auditoriumは大手プロモーターLiveNation傘下の会場という事もあり、先日発表されたアーティスト支援プログラム「

On The Road Again」が受けられる会場です。同プログラムではLiveNation傘下の会場での公演一回につきアーティストに対しガソリン代と交通費として1500ドルの支給、そして会場内のマーチカットも行わない事になっている。恐らくCorey TaylorやWargasm、そしてLuna Auraにはサポートが得られたはず。厳しい経済状況やツアー費用の高騰は全てのアーティストにとって大きな痛手となっており、少しでもサポート出来ればと多くの人々がTシャツそしてVinylを購入していた。

この日最初のアーティストはオルタナロックLuna Aura。Luna Auraはシンガーソングライター/プロデューサーであり、既にThe Killers、Muse、Weezer、Garbage、P!nk等と対バン経験がある若手アーティスト。元々はアーティストに曲を提供する制作側だったLuna Auraは自身でも勝負してみようと2020年にK.FlayやPVRIS等を手掛けたJT Dalyと共にプロデュースしたデビューEP作Three Cheers For The American Beautyをリリース。Nine Inch Nails、Rage Against The Machine、Hole、そしてGarbage等を聴いて育ったというLuna AuraのミュージックはGarbageやSleigh Bellsからの影響が濃く、歌詞にはジェンダーと文化的規範に対する期待、米国での若い女性に課せられている社会的プレッシャーとの闘いを唄っている。Luna Auraのライブは左右にギタリストVince GabuzziとドラマーRyan Rasmussenをつけ、その真ん中で歌うというトリオバンドで演奏。ライブではデビュー作からの曲Honey、そして最新EP作The Fictionからのシングル曲Money Bag、Candy Colored Daydreamを披露。オーディエンスにはまだLuna Auraを知らない人も多かった事で静かにライブを見ている感じではあったがLuna Auraのパワフルな歌唱力とパフォーマンスに曲が終わる度に温かい歓声を送っていた。The Pretty RecklessやPale Wavesが好きな人はチェックしてみても良いかもしれない。Luna Auraが受けたインタビューによると、Coreyからこのツアーのオファーを受けたそうで、当初オファーをマネージメントから受けた時はSlipknotのCoreyと思っていなかったLuna Auraは「Corey Taylorって誰?」という感じであったそうで、「SlipknotのCoreyだよ」とマネージメントが説明した時は全く違うジャンルの自分を知っていた事、そしてツアーに声を掛けてくれた事に凄く感激した事を話していました。
こちらLuna Auraのオフィシャルライブ映像: 

お次はUK出身Wargasm。2018年に元Dead!のSam Matlockが東京でモデルをしていたMilkie Wayをスカウトした事がきっかけで結成。90年代のインダストリアルからニューメタルの流れを消化したサウンドで注目されているアーティスト。これまで、一枚のEP作Explicit: The Mixxxtapeを昨年リリースし単発のシングル曲を発表してきたバンドはまだデビューアルバムVenomがリリース(10/27発売)されていないにも関わらず本国イギリスや欧州圏での知名度が上昇中のバンド。この米ツアーの後にはBabymetalとの欧州ツアーに出る予定だ。会場の暗転と共にメンバー達が続々と登場し歓声があがる。高速のインダストリアルサウンドからの絶叫で始まるEP作からの曲Super Fiendでスタート。「S-S-S-Suck It UP!」の絶叫パートには会場も絶叫で応える。SamのニューメタルなラップとMilkieの掛け合う様なヴォーカルにFear Factory的でニューメタルなギターリフ、そして高速のシンセサイザーが混じりあう同曲はWargasmならではのカオスな世界観が会場全体に広がっていくようだった。次は発売予定のVenomに収録される新曲Minigun。ダークなテクノサウンドにベースラインが鳴り響きSamの絶叫とMilkyのハイトーンボイスが繰り広げられる。シングル曲D.R.I.L.D.Oでは会場からの「Drink! Fuck! Fight! Love!」と合唱が聞こえる。そしてProdigyからの影響が見えるVenomからのシングル曲Do It So Goodではオーディエンスも跳ね回りWargasmのライブを楽しんでいた。ふと会場で出来上がっているサークルピットを見ると中にアニメ:スポンジボブの着ぐるみもいるではないか。メディア班たちも口々に「凄い心構えだ」等スポンジボブの着ぐるみをしているファンにコメントしていた。会場内は暑くはなかったもの着ぐるみの中は相当暑いはずでモッシュピットの中心にてオーディエンスとぶつかり合いサークルピットにも参加しているスポンジボブに「Corey Taylorまでもつかな」と少し心配になってしまう。Wargasmの楽器隊はツアーギタリストEdison Hunter、ツアードラムAdam Breeze、そしてツアーDJ Adam Crillyとなっており、Samはヴォーカルとギター、Milkieはヴォーカルにギターやベースを持ち替えて演奏。面白いのはSamもMilkieもリードヴォーカルを担当しており、Samがリードヴォーカルの時はMilkieがギターかベースを演奏している。管理人が初めてWargasmを見たのはSlipknot主催のKnotfestが2020年に行った配信ライブPulse Of The Maggotsフェスだった。あれから3年、あの時の画面越しに伝わるエナジーはそのままに、演奏力と歌唱力がよりパワフルになったWargasmだった。ライブではExplicit: The Mixxxtapeの収録曲とこれまで発表してきたシングル曲、そしてN*E*R*Dの曲Lapdanceをカバー。カバー曲中にはLimp Bizkitの代表曲Break Stuffのカバーも投入させており、このLimpカバーにはDJ Adam Crillyがステージ前方に入りマイクを手にしBreak Stuffを熱唱。DJ Adam CrillyはSlipknotでいうSid Wilsonの様な立ち位置で、DJマシンの前でヘドバンし踊りまくり、ステージ全域を駆け回り盛り上げに務めている。また、ドラムAdam Breezeもドラムチェアに立ち上がりAric Improta (Night Verses)並にダイナミックにライブを盛り上げていた。WargasmはSamとMilkie中心のバンドではあるもの楽器隊もしっかりと盛り上げ役に徹し楽しんでいる所に好感が持てる。そしてラストソングSpitで盛り上がりまくった所でWargasmは終了。個人的には先日リリースしたLimp BizkitのFred Durstがゲスト出演する新曲Bang Ya Headも披露して欲しかった。FredはいないがDJ Adam Crillyもいるので可能なのではと思ったが今後のツアーにてセットリストに入るのかもしれない。Metal HammerでのインタビューにてKornのJonathan Davisがニューメタルのカムバックを喜んでおり、Jonathan一押しのバンドにWargasmを選んでいました。「彼等はヘビーでありながら新しいものを持っていて今までのサウンドとは違う」と絶賛していた様にSam MatlockとMilkie Wayという異端児がロックをヘビーに、エキサイトに、セクシーに、しかもフレッシュなサウンドでこの混沌の世に殴り込みを掛けているかの様なステージパフォーマンスだった。

ステージ後方スクリーンには「CMFT」の文字が上がり先日リリースした最新作CMF2のオープニングトラックThe BoxがSEで掛かる。暗転された会場に大きな歓声があがりWalls Of Jerichoでも活躍するドラムDustin Schoenhofer、ギタリストZach ThroneとChristian Martucci、そして今作からの新メンバーのDorothyでも活躍するベーシストEliot Lorangoが登場。カントリーな曲The Boxはライブのオープニングとしても最適で、ラストパートは「Cuz All The Eyes Are Smiling…(だって皆の目が笑っている)Take A Breath…(一息ついて)Enjoy The Show(ショーを楽しもう)」と曲が終わりCoreyの開始宣言、ギターフレーズからのドラミングが始まるとCoreyがステージに登場し素晴らしい幕開けに会場内は大歓声に、そしてCMF2の曲Post Traumatic Bluesを披露。Coreyのデスボイス、キャッチーなコーラスにメタリックなギターリフ、そしてChristianとZachのギターソロとファンからも非常に人気の高い曲であり大歓声の中演奏が終わるとCoreyは「2002年に戻ろうじゃないか」とオーディエンスに問う。管理人も一瞬SlipknotのIowaは確か2001年だったからその翌年何かあったっけと思っているとStone SourのRoadrunnerデビューとなったセルフタイトルからの曲Tumultを演奏。これには管理人も驚いた。恐らく本家Stone Sourのライブでもそこまで披露してこなかったナンバーであり同曲はCoreyからのファンへのサプライズ的なプレゼントだろうとニヤリとしてしまう。Coreyの狂ったヘドバンからのメタルソングに会場のボルテージは最高に。Coreyがスタッフからギターを受け取ると前作CMFTからのシングル曲Black Eyes Blueがスタート。ロック/パワーポップなナンバーは前作では米ロックチャートの1位を記録した曲であり、多くのオーディエンスも合唱。中盤にはZachが素晴らしいギターソロを披露。次の曲に入る前にCoreyはオーディエンスに「NO WAY TO BEAT ME、NO WAY TO WIN」を叫ぶよう要求し、会場全体で「NO WAY TO BEAT ME、NO WAY TO WIN」が響くとアップビートでパンキッシュなギターとキャッチーなヴォーカルによるCMF2からの曲We Are The Restを披露。次の曲の前にCoreyは「皆で一緒に唄ってくれるよな」と呼びかけStone Sourのシングル曲Song #3を開始。Coreyの衰えの無い歌唱力に脱帽である。本当に気持ちよく歌っている感じがこちらにも伝わってくる。次はCMF2からのファーストシングル曲Beyond。Christianのギターフレーズから開始するヘビーでありながらメロディックなロックアンセムだ。この曲もCoreyのパワフルなヴォーカルが光る曲でオーディエンスもどんどん引き込まれていく。演奏後Coreyからメンバーの紹介が始まりオーディエンスの歓声と拍手が続く中Coreyは「忘れない内に...(Before I Forget)」と呼びかけるとオーディエンスも気付き大歓声になりSlipknotのシングル曲を開始。会場全体が揺れる様な「I!!!」が響く。演奏が終わると腰掛がステージ中央にセットされアコギを持ったCoreyが「先日ちょいと作った曲をやるよ、そして今日は ”彼” も会場に来てくれているからね」とオーディエンスにいるスポンジボブの着ぐるみに声を掛ける。管理人も、Coreyが反応し声掛けてくれたよ良かったね、とピットをみるとスポンジボブの着ぐるみはモッシュの中にいた事でヨレヨレになってしまっていた。小さくなった着ぐるみでも中の人はガッツポーズをしており管理人も良かった良かったと何故かほっとする。そしてCoreyがSpongeBob SquarePants(アニメスポンジボブのテーマソング)を披露。こちらも会場全体で「SpongeBob SquarePants!!」が響く。Coreyは笑いながら「何か別のライブに来たみたいだ」というとCoreyのソロライブでは定番となったSlipknotの曲Snuffを演奏これにはオーディエンスの多くが速攻でスマホを掲げ撮影スタート。Coreyはギターを離しオーディエンスに向かって「HEeeeey」の掛け声を伝えると会場とCoreyとの「HEeeeey」の掛け合いコールになりそのままStone Sourの曲Absolute Zeroになる。Coreyは「まだ行けるよな」と問いかけるとCMF2からのパンクナンバーTalk Sickを演奏。その後はStone Sourのシングル曲BotherThrough Glassを披露。現在活動休止中のStone Sourを恋しく思っているファンにはたまらないライブになったはずだ。Botherに至ってはこれまでCoreyがギターを持って一人で演奏するスタイルだったのがバンドメンバー全員で演奏する新バージョンとなっており、よりサウンドに深みを増したロックナンバーとなっていた。Stone Sourの曲のライブが見たい、聴きたい人はCoreyのソロライブに行くのもお勧めです。会場全体でThrough Glassを合唱したあとCoreyは「皆愛してるぜ」と一度退場。会場全体で「one more song」コールが起きるとCoreyが再登場し「お別れも言わずに終わるわけ無いだろ」と言い「君達の力が必要だから、デカい声で歌ってくれよ」とSliknotの曲Dualityを披露。大きなサークルピットに会場全体の大合唱の大盛り上がりの中Corey Taylorのソロライブは終了。Corey、Christian、Dustin、ZachとEliotはステージ中心に集まり笑顔で観客に向かって一礼し感謝を伝えていた。

 

セットリストをみると、ソロ作品CMFTとCMF2からの楽曲を全体の半分としっかり演奏、プロモーションし、後はStone Sour、Slipknot、カバーソングという構成になっている。ライブに足を運ぶ人達はみんなSlipknotやStone Sourから来た客という事をしっかり把握しソロ曲の合間にファンが知っていて喜ぶであろう楽曲を入れている。現在Stone Sourでは活動出来ていないCoreyにとってもSlipknotとは違ったサイズと雰囲気のライブであり、観客との距離が近いライブを楽しんでいる様子が伝わって来た。Before I ForgetやDualityのパフォーマンスを見ても歌う時の仕草等がSlipknotの#8とはまた違った歌い方をしていて、マスクの無い素のCoreyのパフォーマンスを比べて見れるのもソロライブの醍醐味だろう。Corey曰くソロ活動は今後も継続してやっていくようなのでチャンスが出来たら是非是非Coreyのソロパフォーマンスもチェックしてみて下さい。

 Corey Taylor Setlist:

The Box
Post Traumatic Blues
Tumult
Black Eyes Blue
We Are the Rest
Song #3
Beyond
Before I Forget
SpongeBob SquarePants Theme Song
Snuff
Talk Sick
Bother
Through Glass

encore:
Duality

 

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