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Gojiraがパリ五輪開会式で演奏した感動を語る。

8/11/2024

Gojiraがパリ五輪開会式で演奏した感動を語る。

7月26日に行われたパリオリンピック開会式にフランス産メタルGojiraが出演し大きな話題となりました。オリンピック開会式にメタルバンドが出演するのは史上初であり、Gojiraはかつては王宮で、その後牢獄としても使用されたConciergerie Palaceの窓際に登場し、フランス革命時に流行したアンセムAh! Ça Iraのメタルアレンジをボートに乗ったオペラ歌手Marina Viottiと一緒に演奏。


パフォーマンス冒頭では首を切られたMarie Antoinetteが登場し歌い始め、Conciergerie Palaceの前に設置された何台ものパイロ装置から炎が吹き上がる中、Gojiraの演奏がスタート。Marie Antoinetteの手綱を見事に取ったGojiraは女王の支配に終止符を打つかの様にMario DuplantierのダブルキックのベースドラムとJean-Michel Labadie(b)がビートを叩き、クラシックな音楽にも精通しているChristian Andreu(g)のヘビーなギターリフ、そしてMarioの兄でありフロントマンJoe Duplantier(vo/g)のうなるような歌詞の解釈は、革命の後は全てがうまくいくと主張していました。約2分半程のパフォーマンスでしたが、目を見張るような迫力ある映像と、Gojiraのヘドバン嵐のアグレッシブなサウンドは、この夜最も話題になった瞬間のひとつとなりました。


こちらパフォーマンス動画: https://youtu.be/TgzDfVfn6w8?si=S5jfdspuQ6qNlegK


このパフォーマンスに対して、一部は悪魔のプロパガンダと非難したもの。メタルヘッズにとっては、世界的な舞台でこのジャンルが認められたという、別の意味での検証でした。オリンピックという国際的な舞台の上で激しいパフォーマンスを披露したGojiraのJoeがRolling Stone誌のインタビューを受け演奏時の感動、メタルコミュニティーへの思い、選曲とメタルアレンジについて、リハーサルについて語りました。


開会式での演奏についてどう感じましたか?

ちょっと現実離れした感覚だったよ。何カ月も前からあの演奏を準備していたんだ。オリンピック委員会と作曲家Victor le Masneから連絡があって、まったく非現実的な話だったので本当にどうなるかわからなかった。俺達のライブを見た人の多くは、あの時代とあの瞬間を飛び越えてしまうような感覚だったのかもしれないね。あまりに気が遠くなるような演出だったから、どうなるかなんて考えもしなかった。だから当日、Conciergerieの上にいて、街の景色やボートで通り過ぎるオリンピックチームを見ている事は本当に衝撃的だった。まさに夢の様な出来事だったね。


世界の舞台でメタルを代表する責任について考えたりはしましたか?

そのことはあまり考えないようにしたよ。オリンピック委員会は、文字通り誰にでも演奏を依頼できたはずなんだ。俺的には、MetallicaやAC/DCのような、誰もが尊敬し、俺達のヒーローで、俺達の音楽ジャンルの有名なバンドが直ぐに浮かんでくるね。自分達がオリンピックを演奏するに値する世界最大のバンドだとか、そんなことは考えたこともなかったよ。だから、とても奇妙だったね。俺が考えるに、2024年は人々に希望を与え、独創的なものを見せるという挑戦だった。だから、パリと委員会にとっては、(フランスのメタルバンドである俺達を起用することで)新鮮で、新しく、独創的なものを表現し、フランスが何たるかを示すという挑戦だったんじゃないかと思うんだ。少なくとも俺達としては、メタルとオペラがこれほど多くの人々の前で、しかも世界的なテレビ中継で一緒に演奏される事はこれまでなかったという事実は、フランスという国にとってのステートメントになったのではないかと思っている。あの演奏によって、「おい、見ろ。我々はまだ世界の限界に挑戦しているんだぞ」と言えるのではないかな。だから、これを実現したフランスに祝福を送りたいね。


誰がAh! Ça Iraを選曲したのでしょうか?

あれは俺達ではないんだ。あれは若手アーティストと作曲家、そしてデザイナーのチームが全体のテーマを決めたんだ。俺達はマリーアントワネットの演出とその瞬間に集中し。その演出がどのように見えるのか、パフォーマンス全体とどのように調和するのかもその場に行くまでわからなかったんだよ。Lady GagaやCeline Dionも演奏するなんて知らなかったしね。俺達はオリンピック委員会の信頼を得ていて、俺達が開会式で演奏すると他の人に言うことは許されていなかった。俺達は開会式で何が起こるか全く知らなかったんだ。オリンピック式典の作曲家であるVictor le Masneと何度もやりとりしただけだっだね。彼は俺達にテンポとガイドラインを教えてくれ、後は自分達が出来る事をやったのさ。


この曲はどのようにしてメタルにしたのですか?

自分達の好きなリフやグルーヴをシンプルかつ自然に思いついて演奏したんだ。メタルシーンを代表するチャンスだと思ったからね。だから、ただ開会式で演奏して、人々に衝撃を与える為にいくつかの音を演奏するのではなく、俺達のいつもの音を披露する事、ダブルキックドラム、叫び声、うなり声、壮大な瞬間、そして最後のブレイクダウン、それらを敷き詰めていった感じだ。そして驚いたことに、それらは全て委員会に受け入れられた。委員会からは幾つかのガイドラインの注文が来たかな。例えば、俺が歌唱中に3回言うことになった “Ah! Ça Ira,”とかね。Gojiraの演奏でフランス語で歌うのは珍しいからちょっとした挑戦だったよ。曲の途中に英語を入れて、より国際的なものにしようと推し進めたのは俺さ。


本番に向けて、曲の準備やリハーサルはどのように行ったのですか?

沢山のステップがあったね。Marioと俺が作った最初のデモは3、4時間かかったかな。出来上がったデモ音源をクラシック音楽の編曲をしていたVictorに送った。俺達はニューヨークのクイーンズにある俺のスタジオで3回ほど会って微調整し、当日に政治的に言って良い悪い事を話し合った。そこにオペラ歌手Marina Viottiも加わったね。ズームミーティングもやったりして長いプロセスだったな。第2段階は、la crème de la crème音楽家の精鋭たちとリハーサルをしたね。300人もの素晴らしいミュージシャンと共演できたのは光栄な事だった、開会式では全員映る事は無かったけどチェロ、チューバ、パーカッション、ベルなど皆あの場で一緒に演奏したんだよ。マリーアントワネットのシーンと、"Ah! Ça Ira "と歌う合唱団が完全にショーを奪ってしまったけどね。しかし、この演奏に参加したクラシック音楽家達には大きな拍手を送りたいんだ。


ネット上でマリーアントワネットの演出に対し悪魔崇拝的と反応がありました。どう思いますか?

演出にそんな意図はないよ。フランスの歴史だよ。フランスの魅力であり、斬首された人々、赤ワイン、そこらじゅうの血、ロマンチックで、普通だ。悪魔的なものは何もない。フランスは革命時に国家と宗教の分離を行った国だ。それは共和制フランスの基盤でありとても重要なものだ。俺達はそれを「laïcité」と呼んでいる。国家が宗教的でなくなることで、表現も象徴も自由になる。歴史と事実を演出しただけだよ。


開会式でネット上で「最後の晩餐」の再現について反応がありました。あなたはどう思われましたか?

意外に思われるかもしれないが、俺は見ていないんだ。俺には家族と子供がいる。だから、オリンピックで集中した直後俺は完全に放心状態の様な感じで家族と一緒にいたんだ、だから全てをじっくり見ることができなかった。


Conciergerieの窓際の台でリハーサルはしたのですか?

現場ではリハーサルをしなかったからあの演奏はちょっとした挑戦だった。4人のミュージシャンが数曲一緒に演奏するだけでも10回はリハーサルしないとうまくいかない。そして、ツアーに出て、お互いをよく知っているとはいえ、本当に一体となり、本当にパワフルなものを提供するには、1週間はかかるんだ。そう考えると...まともにリハーサルをしたことのないショーをテレビの生放送で披露するのは挑戦だったね。照明係、音響係、カメラ係、サウンドエンジニア、お互いを知らないのに共演したミュージシャン、ダンサーの人達全員がベストを尽くしたんだよ。全員が選ばれた人達で、セレモニーに出たいから出るのとは違うんだ。だから、この式典に出席した全ての人達は、招待され、これを実現し、現実のものとするために、本当にスケジュールをやりくりしなければならなかった。現場でのリハーサルはなかったけど、あのバルコニーには式典の3日前に一度だけ10分間だけ立った。ハーネスも試したけど、ギターは持っていなかったから、ギターを持ってあそこに立って演奏することがどういうことなのかさえ想像できなかった。マイクスタンドは俺が立っている板の上にボルトで固定されていてConciergerieの部屋に入らなければならなかった。オリンピックという世界的なイベントでさえ建物に入る為に何カ月も交渉が必要だったようだよ。オーケストラとのリハーサルはあったが、それは秘密を守る為に別の場所だった。全てを統括するのはとても複雑で、政治的で、理路整然としていて、実際にうまくいったことは奇跡的なことだったね。


あなたはConciergerieの窓に立っていて、パイロ装置から炎が上がり、あなたの弟と他のバンドメンバーも見えない状況で演奏していましたよね。その瞬間何を考えていましたか?

とても不思議な気分だったね。俺はもともと少し恥ずかしがり屋なんで、演奏をするときはスイッチが切り替わり、"ショーモード"になるんだ。フリーズすることはないと思っていたよ。でも、自分の演奏スペースがどれくらいの高さなのかわからないけど、30メートル、100フィートの高さで、雨も降っていたから本当に本当に変な気分だった。メイクやヘアスタイルを整え、衣装やハーネスやギターを身に着け、"ちゃんと演奏できるかな?"と思っていた。 雨の中、ライブの準備のために15分待たされたんだよ。俺達や出演者全員にとって壮大な挑戦だった。クラシックのチェロや楽器は濡れていたしね。俺達は演奏する楽器や電子機器を守らなければならなかった。ありがたいことにバンドクルーも一緒だったんだよ。彼らは隠れていたけど、壁の真後ろにいて、すべてが機能するように努めていてくれたんだ。


パフォーマンス後、どのような反応がありましたか?メールはたくさん来ていましたか?マクロン大統領から連絡はありましたか?

マクロン大統領から連絡はなかったけど、膨大な量のメールを受けたよ。俺は携帯の扱いが本当に本当に下手でね。頻繁に携帯をなくしてしまうんだ。このアプリやあのアプリでもメッセージをチェックするのを忘れるから見れてないメッセージがまだあるんだよ。ただメタルコミュニティーは大きく盛り上がったよね。メタルは結束の固いコミュニティーなんだ。世界中にいるメタルバンドはお互いに高め合い、一緒に仕事をし、一緒にツアーに行き、サポートし合っている。だから、多くの人がメタルコミュニティー全体、メタルジャンル全体に対して、支持と喜びを表明してくれたんだ。もしかしたら、人々は3分間の演奏を経験したことで、メタルも悪くないと思うようになったかもしれないね。大好きなバンドや業界の親友たち、スポーツ選手等色んな人からメールを貰ってとても圧倒されたよ。


マクロン大統領とはまだ話したことがないけど共通の話題を持っているしぜひ話したいと思っている。GreenpeaceやSea Shepherd等の共同創設者Paul Watsonについて意見交換したいと思っていたんだ。今拘留中であるWatsonは高年齢から終身刑にもなり得るんだ。マクロン大統領がWatsonを支持しデンマーク政府に釈放するよう要請し、避難場所を提供しようとしたことは知っているよ。


先程開会式でのパフォーマンス中に話してはいけない政治的なことがあるとおっしゃっていましたね。それもその一つですか?

俺達はこの大事な式典に参加できたことをとても光栄に思っているよ。一瞬たりとも、"このイベントを妨害しよう"とか、"このイベントをハイジャックしてメッセージを広めよう"などとは思わなかったね。俺達はミュージシャンであり、キャリアがある。この式典に参加する事はメタルコミュニティーにとって素晴らしいことだと思ったんだ。だから、俺達は参加し、それが素晴らしいものに見えるように最善を尽くした。でも、言いたい事がないわけじゃないし、バンドの話題を利用して、あちこちにアイディアを広めようと思っているんだ。


私はAh! Ça Iraの歌詞を、「すべてはうまくいく。人々はひとつになるべきだ」と捉えています。その可能性はあると思いますか?

この曲について語るとき、二通りの意味があるんだ。文字通り、"It will go"、つまり "大丈夫だよ"という意味だ。つまり、"大丈夫だよ、みんな"と世界に向けて言っているんだ。しかし、ある言い方で違ったトーンで言うと、実際には、"もう十分だ"という意味になる。"Ça ira bien"と言えば、"OK、もう十分だ"という感じになるんだ。とても古い言い方で今はもう使わないんだよ。もともとの意味は、"大丈夫、私たちならできる"というものだった。しかし、革命の時代には、"もう十分だ。貴族を吊るし上げ。そして物事を変えるんだ"という風に受けられた。とても長くて古風な歌で、歌詞もたくさんある。俺はあの演奏で歌った自分のパートの歌詞を書いたんだ。そこで俺は、暴力や暴動、斬首への誘いではなく、"文字通り、大丈夫だよ"というようなポジティブな部分を表現することにした。俺が書いた自身のパートは、"火や炎を恐れることなく、良い時代がやってくるから喜ぼう"というメッセージだ。戦争が起きたり、おかしな指導者達が世界のあちこちを乗っ取ったりしている。この困難な時代における世界への希望のメッセージなんだよ。世界には奇妙な雰囲気が漂っている。特に若い人達には、地球温暖化についてだったり、地平線上にある暗い先について考えた時、"大丈夫だよ"というメッセージを聞きたいと思ったんだ。俺達は未来を変えることができる。俺達は変化になれる。物事を正すのに遅すぎるということはないんだってね。革命は個人的なものなんだ。人々がもっと思いやりを持ち、自分自身のために正しい決断をすることを決めれば、物事はうまくいくと思っているよ。


こちらJoe Duplantierのインタビュー記事: https://www.rollingstone.com/music/music-features/gojira-olympics-marie-antoinette-interview-1235070037/



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